子どもとの日常で感謝を育む習慣:家族みんなでポジティブに
子育てや家事に追われる日々の中で、つい時間に追われたり、目の前のことに精一杯になったりすることもあるかと思います。そんな中でも、家族との時間を少しでも心地よいものにしたい、子どもとの関係をより良いものにしたい、という願いをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ポジティブ心理学の研究では、感謝の気持ちを持つことやそれを表現することが、個人の幸福度を高めるだけでなく、人間関係を良好に保つ上で非常に有効であることが分かっています。これは、家族という最も身近な関係においても同様に当てはまります。
特に、子どもとの関わりの中で感謝を意識し、実践する習慣を取り入れることは、子ども自身の心の成長を促し、家族全体のポジティブな雰囲気を作り出すことに繋がります。ここでは、忙しい毎日の中でも無理なくできる、子どもと一緒に感謝を育む具体的な習慣をご紹介します。
なぜ子どもとの日常で感謝が大切なのでしょうか
感謝は、単に「ありがとう」と言う行為だけではありません。他者から受けた親切や恵み、あるいは自分自身の持っているものや環境に対して意識的に目を向け、その価値を認識し、肯定的な感情を抱く心の働きです。
これを子どもとの日常に応用することで、以下のような良い影響が期待できます。
- 子どもの感情認識と共感力の向上: 感謝の気持ちを表現することを通して、子どもは自分以外の人の気持ちや貢献に目を向けるようになります。これは他者への共感や理解を深めることに繋がります。
- 自己肯定感の育成: 「ありがとう」と感謝される経験は、子どもにとって自分が他者に貢献できた、役に立てたという実感となり、自己肯定感を育む助けになります。
- 家族間のポジティブな循環: 親が子どもに感謝を伝え、子どももまた親や他の家族に感謝を示すことで、「ありがとう」のポジティブな感情が家族内で循環し、お互いを尊重し合う温かい関係性が築かれます。
- 困難な状況への対応力(レジリエンス)の向上: 日常の良いことや、他者の助けに感謝する習慣は、困難に直面した時に希望を見出し、乗り越える力(レジリエンス)を高めることにも繋がると考えられています。
子どもと一緒にできる感謝の習慣
子育て中の忙しさを考えると、特別に時間を取る必要がなく、日常の何気ない瞬間に取り入れられる習慣が理想的です。ここでは、いくつかの具体的な習慣をご紹介します。
1. 寝る前の「今日のありがとう」タイム
一日の終わりに、家族それぞれが「今日あった良かったこと」や「誰かに言いたいありがとう」を一つずつ話す習慣です。
- やり方: 寝る前や夕食後など、家族が少し落ち着いた時間に、一人ずつ順番に今日あった感謝したいこと、あるいは嬉しかったことを簡単に話します。「〇〇ちゃんが絵本を読んでくれてありがとう」「パパがお買いものに行ってくれて助かったよ」「ごはんを作ってくれてありがとう」「おもちゃを片付けられた自分にありがとう」など、どんな小さなことでも構いません。
- ポイント: 長く話す必要はありません。一人一言でも十分です。子どもが小さくて言葉にするのが難しければ、親が見つけたり、「〜してくれて嬉しかったよ」と親が感謝を伝えたりすることから始めます。
- 効果: 一日のポジティブな側面に意識を向ける練習になります。家族がお互いの行動に感謝し合うことで、愛情や絆を感じやすくなります。
2. 具体的に「助かったよ、ありがとう」を伝える
子どもが家事の手伝いをしたり、自分のことを自分でやったりした時に、単に「ありがとう」と言うだけでなく、何がどう助かったのか、あるいは何が良かったのかを具体的に伝える習慣です。
- やり方: 例えば、子どもがおもちゃを片付けたら「おもちゃを片付けてくれてありがとう。部屋がきれいになって気持ちいいね、助かったよ」、自分で着替えられたら「自分で着替えられてすごいね、ありがとう。ママ助かるよ」のように伝えます。
- ポイント: 結果だけでなく、子どもが頑張った過程や意図にも目を向けると、より子どもの意欲を育みます。「お手伝いしようとしてくれたんだね、その気持ちが嬉しいよ、ありがとう」など。
- 効果: 子どもは自分の行動が他者にどのように影響を与えているのかを具体的に理解し、「役に立てた」という達成感や自己肯定感を得やすくなります。感謝の言葉が、単なるお礼ではなく、自分の行動への肯定的なフィードバックとして機能します。
3. 食事の時間を感謝の時間に
食事の前に「いただきます」と言う際に、食べ物を作ってくれた人、食材を育ててくれた人、命そのものなど、様々なものへの感謝を意識する練習をします。「ごちそうさま」の時も同様です。
- やり方: 「いただきます」の前に、「この美味しいご飯を作ってくれたお母さんにありがとう」「お野菜を作ってくれた農家さんにありがとう」「命をくれたお魚さんにありがとう」など、大人が声に出して伝えることから始めます。子どもにも「何にありがとうを言いたいかな?」と問いかけてみるのも良いでしょう。
- ポイント: 難しい説明は不要です。日々の当たり前の恵みに目を向け、感謝する姿勢を大人が見せることが大切です。
- 効果: 日常的な行為である食事を通して、自分たちが多くの恵みに支えられて生きていることを感じることができます。感謝の対象を広げることで、豊かな感受性が育まれます。
小さな一歩から、無理なく続けること
これらの習慣は、どれも数分あればできることです。完璧に毎日続けようと気負う必要はありません。週に数回から、あるいは「今日のありがとう」タイムだけでも、できることから試してみてください。
子どもが乗り気でない時や、忙しすぎて実践できない日があっても、自分自身を責めないでください。大切なのは、感謝の気持ちを家族の中で意識すること、そして小さな肯定的なやり取りを積み重ねていくことです。
感謝の習慣を家族で実践することは、困難な時に互いを支え合う力や、日常の小さな幸せを見つける感性を育みます。焦らず、家族それぞれのペースで、感謝のあるポジティブな日々を育んでいきましょう。